ストリップ研究会『ストリップ芸大全』

 ストリップについて調べ物をしてみようと思い、とりあえずAmazonで「ストリップ」と検索して出てくる本いくつかを買った。その一冊。 

ストリップ芸大全

ストリップ芸大全

 

  『ストリップ芸大全』(ストリップ史研究会)。タイトルどおり、メインの内容はストリップの「芸」の紹介。

・第一章 驚愕の花電車
・第二章 ストリップの秘技秘芸
・第三章 客参加の出し物
・第四章 ペア&グループショー

 という4つの章に分かれ、数々の芸が紹介される。花電車の項目にはそれぞれイラストと解説に加えて「難易度・希少価値・現存の有無」、第二章の項目には写真と解説に「発祥年度・現存の有無」が書かれている。

 花電車はすでに「”無形文化財級”の希少価値」とされている。私自身は、万国旗やりんごなど某踊り子さんの演目で一部見たこともあるが、ほぼ知らない世界。ニュートラルでかわいいイラストが添えられているのもあって牧歌的な雰囲気を感じる。

 この本に挙げられているさまざまな「芸」、そして付録の「ストリップ年表」からは、ストリップ劇場が手を変え品を変え興行を打って客を掴もうとしてきたことがよくわかる。戦後から現代へというスパンで見れば、他の風俗業との競争の中で、ストリップの世界も変化し過激化し、この本に挙げられているようなさまざまな出し物が生まれてきた。しかしその後はアイドル化・ソフト化していって、もっぱらショーの要素が強い現代に至る。巻末の年表によれば1980年代がその分岐点で、「アイドル路線とマナ板路線の二極分化がはじまる」とされている。
 現在多くの劇場でメインの出し物となっている「ソロベットショー」は昭和31年頃発祥。当時は1番がソロベット、2番が入れポン、3番が天板…とだんだん過激になっていく香盤が主流だったそう。この本では「ソロベット」が「ストリップの基本形」とされていて、手拍子や拍手、リボンやタンバリンのことも書かれており、現在に近いかたちなのかなと思う。ちなみに現在の10日刻みの興行になったのは昭和44年のことで、それまでは15日だったそう。

 また現在のストリップのもうひとつの柱ポラロイドショーは昭和56年発祥。当初は無料で人数制限があったが、大盛況だったため有料で全員に撮らせるようになり、あっという間に他の劇場へも広まったとのこと。「裸の写真」の価値がかなり薄れた今日では写真そのものが欲しいというよりポラの大きな意味はコミュニケーションの時間、もっといえば人気のバロメーターや劇場へのお布施、と思われるけれど、このときは写真そのものが貴重だったのだなあ。しかも撮れるのはストッキング越しという……。

 奥付の日付は2003年12月25日。この頃のストリップ劇場は「90館を切るまでに減少している」という。そこから現在まで15年でさらに相当減ってしまった。また、2003年時点では(かろうじて?)存在し、いまではおそらくなくなっているのは、マナ板ショーや個室を中心とする踊り子と客の接触(いまでもあるのはタッチ、天板?)、外国人「出稼ぎ」ダンサー、男女ペアでのステージだろうか。私はいま劇場に通っていて、かなりシステマチックなルールや暗黙の了解を感じ、ステージの上は男性禁制くらいに感じていたけれど、ずっとそういうわけではなく、わりと短い時間で大きく変化してきたようだ。劇場で他のお客さんの話を聞くと20年、30年通っているという方もざらにいるので、そういう変化を見てきた方の話を聞いてみたい。
(追記:数年前まで外国人ダンサーや個室が存在していたという劇場の話を聞いた。地域差、劇場ごとの差も大きいと思われる。)

 巻末の付録は年表のほかにも「業界用語一口メモ」「劇場の基礎知識」「人気ストリップ劇場の夢の跡」と充実している。著者になっている「ストリップ研究会」はどんな研究会なのか謎、監修者の石橋ワタル氏も謎。でもとりあえず、参考文献を付けてくれているのはありがたい。