栗橋記

 年内で引退するという踊り子さんを追って、ライブシアター栗橋に行った。私にとっては初めてロック座以外の劇場だ。

 劇場のウェブサイトには最寄り駅からの送迎があると書いてあったが、なんとなく気が引けて、東武南栗橋駅から歩くことにした。とてもいい天気のなか、駅前のパン屋で買ったパンを食べながら気持ちよく歩いた。一軒家の並ぶ道。そして広がる田んぼ。本当にこんなところに劇場があるのかと思っていると、「栗橋大一劇場」の文字が遠くから見えた。

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 劇場に近づき、まず目に飛び込んでくるのは大きな駐車場。たくさんの車が止まっていた。それだけで駐車場のない都心の劇場とはちがう雰囲気がする。来ている人たちも、その人たちの舞台の楽しみ方もちがうのではないかと感じさせる。埼玉にはほかに蕨にも劇場があるという。どうして栗橋なのか、蕨なのか。いつか調べてみたい。

 入口の方へ歩いていくと、ちょっと強面のおじさんが、お姉ちゃん入るのかいときいてくる。はいと答えて受付を案内される。受付で入場料を払うと、どの踊り子さん目当てで来たのかをきかれた。

 ロビーには踊り子の牧瀬茜さんによる、踊り子さんたちの写真を飾ったギャラリーがある。それから、ファンによる踊り子さんのイラストや、近いうち出演する踊り子さんの出ているDVDの紹介なども貼られていた。

 場内に入る。まず舞台が低い! 後ろの舞台はほぼ客席と同じ高さで、盆(前方の円形舞台)は後ろの舞台とは段差をつけて少し高くなっている。それでも膝くらいの高さだろうか。天井も低くて、長身の踊り子さんは盆から後ろに降りるときに頭をぶつけそう。そして、舞台の後ろと横が鏡張りになっている。舞台が低くて見えにくい部分はこれで多少解決でき、また独特の雰囲気がある。鏡を使ったポラを撮るのも楽しそう。

 客席は段差なく椅子が並んでいる。今回は出遅れたおかげで3列目か4列目に座り、舞台が低いのもあって、踊り子さんが盆で横になるときは人と人の間からしか見えなかった。今度行くときは早めに行っていい席を…。そういう事情なので、脱いでからも立っている時間が長い演目が、この劇場では映えるのかもしれない。

 トイレと喫煙所は場内から行けるところにあるようだったが、一応ロビーに行き、スタッフさんにきいた。そしたら女性用は外だという。これしかないんですけど…と指されたのはイベント会場にあるような仮設トイレ。もしや手を洗う場所がないのでは…?と、不安になりながら出ると、あった。雰囲気満点の水道が。

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 初めての非ロック系劇場とはいえ、この日は「ロック大会」(ロック座所属の踊り子さんが出演する)だったので、踊り子さんは観たことのある人ばかりだった。引退を控えた踊り子さんもいて、休日でもあり、劇場はかなりにぎわっていた。

 二周りステージを楽しんだあと、帰りもまだ明るかったのでまた歩いて駅まで行こうとしたところ、例の強面のおじさんに呼び止められ、駅まで送ってあげるからと。お言葉に甘えて送ってもらうことにした。車で行けば駅まではすぐ。送迎のあることは知っていたんですけどちょっと遠慮してしまって、と言う私に、女性のお客さんでも迎えに来てと電話してくる人はいるよ、とのこと。明るいときにはのどかな道も夜はかなり暗くなりそうなので、送ってもらえれば安心(とはいえ、女性には車での送迎に抵抗のある人もいると思う…)。

 初めての栗橋はちょっとしたお出かけ気分で楽しかった。ロック座系列以外の劇場に行くという今年の目標は達成(その後DX歌舞伎町も)。2017年の目標は関西方面への遠征だ。