イルミナ創刊号編集後記②―「踊り子へのラブレター」を中心に
ストリップと社会と私を考えるZINE『イルミナ』創刊号を、おもしろ同人誌バザール(11/1)と文学フリマ(11/22)で頒布しました。たいへんな状況ですが、会場まで来てくださった方、また委託など通販などでお求めくださった方、本当にありがとうございました。
ここでは各コンテンツについての個人的な感想を書きます。↑こちらの記事の続きです(note版とナンバリングが異なります)。
ストリップ初体験記(松村早希子)
これまで文字主体で進んできたところにバーン!と見開きで、イラストと手書きの文章によりストリップ初体験の感動がつづられています。
女性が主体となって表現する「性」は、こんなにもあっけらかんとさわやかに楽しめるんだ…!!
個人的には一度だけ拝見した平野ももかさんが描かれているのがうれしいです。まさご座で、お正月だったこともあってか平野さんはこのイラストにある巫女の演目を出していました。その透明感と、客席を飛び回る姿……忘れられない踊り子さんの一人です。
踊り子へのラブレター
特定の踊り子さんに焦点をあて、さまざまなアプローチによって、その踊り子さんの魅力そしてストリップの魅力に迫ることを目指したコーナー。次号以降も続けていく予定です。
今回は黒井ひとみさん、武藤つぐみさん、友坂麗さんへのラブレター。このコーナーを読んでその踊り子さんを観たいと思っていただけたらなによりです。
ラブレター to 黒井ひとみ
扉絵(美樹あやか)
コーナーの扉に黒井さんの魅力を端的に表すようなイラストをと考えたとき、ぜひ美樹さんに依頼したいと思いました。芯があって、繊細で、願いに満ちている……私たちが黒井さんから受け取っているものが具現化されたような扉絵です。
月面とカルメン(松本てふこ)
黒井さんの演目「聖裸月」と「リリィカルメン」をモチーフにした俳句の連作です。このページのおかげで本全体が一気に格調高くなった気がします。
ストリップの演目のことを人に話すとき、私はときどき、「俳句みたい」と言います。ステージ作りにルールがあり、限られた要素のみで構成される、しかしその限定によりむしろ宇宙的な広がりが生じる、というような意味で。そういう気持ちで見ると、4句ずつの連なりが4曲で構成された演目のようにも見えてきます。
どこかで松本さんに先導していただきストリップ句会をしたい!
座談会 黒井ひとみを愛する女たち
「黒井ひとみはなぜ女たちを虜にしていくのか?」「彼女たちの感じている「エロ」とは何なのか?」に迫りたいために開催された座談会です。twitterで見かける黒井ひとみを愛するアツい女たちにお声がけし、zoomで収録されました。私は基本的に書記なので本文にはあまり出てきていないですが(なぜか百合に一家言ある人みたいに登場している…)、参加された皆さんの情熱と、演目の深い読み込みに驚きっぱなしの本当に楽しい会でした。
黒井さんのパワーは人を動かして、その人の考えや、ひょっとしたら人生を変えてしまう。ストリップ劇場は客席こそそれほど多くないですが、これだけの人を動かしてしまうパフォーマーは、ほかのジャンルに広げてみても実はそんなにいないんじゃないでしょうか。
16分間のアイドル(南明保)
初めてのストリップで黒井さんに出会った、南さんによるエッセイです。まず、ここで語られる黒井さん像は上の座談会で語られる黒井さん像とまったく齟齬がなく、誰が観ても黒井ひとみはこうなんだ!と思えます。
そして丁寧に書かれた南さん自身の視線と感情の動きを読むと、長くはないステージの時間に次々と光景があらわれ、観る人のなかにはそれらの光景に触発されたさまざまな感情が去来するのがストリップを観るという体験なんだなあとしみじみ感じました。
行ったことのある方は気づかれたかと思いますが、舞台になっているのはわらびミニ劇場です。編集部のあいださんとは会うたびにこの劇場の話をしていまいます。いつか特集をやりたいです。
ラブレター to 武藤つぐみ(ひな🐰)
表紙のイラストも提供してくださったひな🐰さんによる武藤つぐみさん演目紹介。間違いなくこの本で最も濃密な4ページで、本を手にしたらまず開いてほしいほどです。
装画には以前描かれたイラストのなかから編集部リクエストで1点を使わせていただきました。爽快で、開放感があって、私たちの表現したいことにぴったりむしろそれ以上の表紙になったと思います。初めて武藤さんを観たときの鮮烈な印象がそのまま書かれている「装画解説」も最高!
ラブレター to 友坂麗
座談会 友坂麗とは何者なのか
イルミナ準備号に灘ジュンさん引退公演についての文章を寄せてくださった半田なか子さんをゲストに「友坂麗とは何者なのか」を語る会。3月頃に某所で収録してから緊急事態宣言の期間を挟んで半年以上、麗さんを観たりなにか思いついたりするたびに書き足して削ってを繰り返し、創刊号のなかで一番時間をかけてつくった記事です。
友坂麗さんは舞台の上から人と人との関係のありかたを見せてくれる、互いを知り知られる幸福で満たしてくれる。この世にあって人が互いを人間扱いすることはとてつもなく難しいことだけど、一瞬でも誰かと通じ合えた経験はずっと人を生かす。そういう経験をくれる。
— うさぎいぬ (@usagisan_u) 2020年11月10日
そんなこんなで私はこんな思いに至りました。この座談会は友坂麗について、ストリップについて、何か語ることに成功しているでしょうか? 読んだ方の考えに委ねたいと思います。
熱海銀座劇場へ行こう♨(うさぎ)
私が書いた記事で、写真と文による軽い旅行日記です。都会の劇場だけでなくいろんな劇場の魅力があることを書きたくて入れました(といいつつ道後やあわらへは行ったことがないので近いうちに行きたい)。
文のなかで、牧瀬茜さんのステージに少しだけ触れて「悠久の時の流れ」と書いています。牧瀬さんを語るには経験も理解もとても追いつきませんが、いつかなにか言葉にしたい踊り子さんです。
ストリップに行ったらドキドキとキラキラが大洪水な件(にゃがた)
創刊号のなかで3本目となるストリップ初体験エッセイ。
一気に読みたい疾走感ある文章のなかで、私の好きなフレーズは「美しい人を美しい言葉で褒めたい!」です。ここの「美しい」は、一般的にいう「美」ではなくストリップ劇場にある(ような)「美」のこと。私もストリップのことはひねくれずためらわず、多少大げさに見えても美しい言葉を使って語りたいといつも思っています。
多くの方にいろいろな視点からストリップについて語っていただき充実の本になりました! 参加してくださったみなさまありがとうございました。
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